久保 秀幸Kubo Hideyuki
教授
専門分野
都市政策、地域資源まちづくり
担当科目
都市・地域計画論、観光まちづくり論 ほか
経歴
大阪府生まれ。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士、同博士課程(後期)修了、博士(創造都市)。東京大学不動産情報プロジェクト特別研究員、大阪市立大学大学院創造都市研究科客員研究員、大阪市立大学大学院都市経営研究科附属都市研究センタープロジェクトメンバー、大阪公立大学大学院都市経営研究科客員研究員を経験。日本都市学会特別賞(学術部門)受賞、日本都市学会論文賞受賞。政令指定都市職員として30年の従事を経て現職。研究分野は、都市経済政策や歴史的景観など地域資源を活かしたまちづくり。著書として『経済効果入門-地域活性化・企画立案・政策評価ツールー』(日本評論社、共著)、『まちづくりと創造都市2-地域再生編-』(晃洋書房、共著)、『21世紀の都市像-地域を活かすまちづくり-』(古今書院、共著)などがある。
自分をひとことで言うと?
街並みを見るのが好きな都市政策研究者
インタビュー
――先生は、もともと研究者だったんですか?
いえ、実は最初から大学教員や研究者をめざしていたわけではありません。私は大阪府の出身で、長い間、自治体職員として働いていました。
――自治体職員ですか。
はい。政令指定都市である堺市役所で、技術職員として30年間勤務していました。
――30年というと、かなり長いですね。
そうですね。振り返ると、下水道事業から始まり、その後は、都市計画道路事業や高速道路事業、バリアフリー事業、自転車環境整備事業、そして土木防災など、人生の大半を都市の道路事業と向き合いながら過ごしてきたことになります。道路は、都市において重要なインフラ施設で、上下水道やガス、電気などの生活インフラの整備だけでなく、交通渋滞、市街地開発、景観、防災などに密接に関わるもので、「道づくりは、まちづくり」を意識しながら業務に携わってきました。
――働きながら大学院へ進学されたのですか?
はい、33歳の時でした。当時、私は現場で仕事をしながら、「もっと広い視点で都市や地域を考えたい」と思うようになっていました。技術職として仕事をしていると、どうしても“整備する、維持管理する”に対応することが中心になります。しかし、なぜ整備するのか、必要なものは何か、都市全体の構造や経済との関係まで考えようとすると、もっと理論的に学ぶ必要があると感じたのです。特に関心を持ったのが、都市と経済の関係でした。
――都市経済政策を専攻されたのですね。
はい。社会人大学院へ進学し、都市経済政策を学びました。昼間は役所で仕事をして、夜や休日に大学院へ通う生活でしたから、正直かなり大変でした(笑)。でも、その経験はとても大きかったです。現場で感じていた疑問が、学問を通して少しずつ整理されていく感覚がありました。
――どのようなことを学ばれたのですか?
都市は、単なる“建物の集まり”ではありません。経済、文化、交通、人の交流、歴史、産業など、さまざまな要素が重なり合って形成されています。たとえば、「なぜある地域には人が集まり、別の地域は衰退していくのか」「都市の魅力とは何か」「創造的な都市とはどのようなものか」といったテーマに関心を持つようになりました。そして研究を続ける中で、最終的には博士(創造都市)の学位を取得しました。
――“創造都市”という言葉が気になります。
創造都市というのは、単に経済成長をめざす都市ではなく、文化や創造性、人材、多様な交流を活かしながら持続的に発展していく都市であると考えています。現代の都市は、人口を増やせば発展するという時代ではなくなっています。むしろ、地域の個性や文化、創造性をどう活かすかが重要になっています。私は、行政現場での経験と研究の両方を通して、「都市づくりには“人の創造力”が不可欠だ」ということを強く感じるようになりました。
――行政の経験と研究がつながっているのですね。
そうですね。私は“現場”と“理論”の両方を大切にしたいと思っています。大学院で学んだからこそ、行政時代の経験を違う視点で見直すことができましたし、逆に現場経験があったからこそ、研究にも具体性が生まれたと思っています。机上だけでは分からないことがありますし、現場だけでは見えない構造もあります。その両方を行き来することが大切だと思っています。
――現在はどのような授業を担当されているのですか?
本学では、都市・地域計画論や観光まちづくり論などを担当しています。
――“観光まちづくり”も専門なのですね。
はい。近年、観光は地域づくりと非常に深く結びついています。研究において、歴史的景観の保全、活用型のまちづくりをテーマに取り組んできました。大切なのは、「地域の魅力を地域自身がどう再発見するか」だと思っています。地域資源を活かすことにより、地域の歴史や文化、人のつながりが見直されることがあります。外から来た人の視点によって、地域の人が自分たちの価値に気づくこともあります。そういう意味では、観光は単なる経済活動ではなく、“地域を見つめ直すプロセス”でもあると思っています。
――授業では、どのようなことを大切にされていますか?
私は、学生に“答えを覚える”のではなく、“問いを考える力”を身につけてほしいと思っています。都市や地域の問題には、単純な正解がありません。たとえば、道路などのインフラ整備などを進めれば経済効果が生まれるかもしれませんが、その後の維持管理も必要になってきます。人口減少時代に新たな整備ではなく、これまでのストックを活かした使い方も重要になってきます。観光振興によって地域が活性化する場合もありますが、観光客が増えすぎることで地域住民の生活に影響が出ることもあります。だからこそ、多面的に考える必要があります。
――先生ご自身、九州とのご縁もあるそうですね。
はい。父親の実家が長崎市にあるため、子どもの頃から九州には親しみがありました。ですから、現在こうして九州で教育や地域づくりに関わることができているのも、何かのご縁だと感じています。九州には、それぞれの地域に独自の文化や歴史があります。そして、人のつながりも非常に温かい。だからこそ、この地域には大きな可能性があると思っています。
――最後に、これからの目標を教えてください。
私はこれからも、“創造的な都市・地域とは何か”を学生や地域の方々と一緒に考えていきたいと思っています。都市や地域は、行政だけで作られるものではありません。そこに暮らす人々の思いや活動があって初めて、魅力ある地域が生まれます。だからこそ、学生たちにも、「地域を自分ごととして考える力」を身につけてほしいと思っています。都市づくりや地域づくりというのは、そこに暮らす人が、「このまちで生きていきたい」と思える環境を作ることです。私はこれまでの行政経験と研究活動を活かしながら、これからも地域と向き合い、人と地域が共に成長できる社会について考え続けていきたいと思っています。
武雄の印象
新幹線駅もある整ったまち
趣味、特技、マイブーム
水泳、魚釣り、家庭菜園、熱帯魚マニア歴40年、柴犬も飼っています。
好きな言葉や信条
袖振り合うも他生の縁。知るを楽しむ。
愛読書
『人間のための街路』 B・ルドフスキー(著)平良敬一、岡野一宇(訳)