前原 志保Maehara Shiho
准教授
専門分野
地域研究(台湾)、政治社会学
担当科目
ジェンダー論、アジア地域学Ic(中国・台湾)、地域プロジェクト ほか
経歴
福岡県生まれ。カナダ、ブリティッシュコロンビア大学卒業(東アジア研究)、イギリス、リーズ大学修士課程修了(中国研究)、台湾、国立台湾大学国家発展研究所で法学博士号取得。 博士論文「李登輝と台湾アイデンティティ」(2014年)で財団法人新台湾和平基金会第一回台湾研究博士論文賞受賞。 監訳書に『蔡英文 新時代の台湾へ』(白水社、2016年)、翻訳書に『蔡英文 台湾初の女性総統が歩んだ道』(白水社、2017年)。共著に『Changing Taiwanese Identity』(Routledge、2017年)など。九州大学大学院人間環境学研究院准教授を経て、2026年から現職。九州大学大学院人間環境学研究院 D-Be 部門学術協力研究員。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。
自分をひとことで言うと?
ひょんなことから台湾を研究することになった人
インタビュー
――高校卒業後カナダに留学されたのはなぜですか?
小学校1年の頃から英語を習っており、将来は留学したいと考えていました。日本の大学に進学した後、交換留学する道も考えましたが、「言葉を話すには、その文化的な背景を学ばないと意味がない」という両親の考えで高校卒業後、カナダの大学に進学しました。日本を離れて暮らすのは初めてでしたし、現地の人に混じり膨大な予習復習を必要とする授業についていくことは簡単ではありませんでした。
――そこからなぜ、「台湾研究」を志すようになったのでしょうか?
最初は周りに台湾人、香港人の友人たちがたくさんいたことで、彼らの言葉や文化を学びたいと思いました。イギリスの大学院までは中国研究をメインにやっていたのですが、修士論文のテーマを選ぶ際に指導教官から台湾を研究テーマにしてみてはどうかと勧められて、台湾に関する修士論文を執筆しました。その後は語学のブラッシュアップのために台湾に1年間語学留学に行こうと決めました。
――そこからなぜ台湾の大学院へ進学することになったのでしょうか。
もともとは1年の語学留学後は英語圏の大学に戻るつもりでした。ただ、1年で習得できる語学のレベルでは満足が出来ず、もう少し時間が必要だなと考えました。そんな折、奨学金のお話をいただき、国立台湾大学の博士課程に行くことになりました。当初は英語で博士論文を執筆する予定でしたが、最終的には台湾華語で執筆することになり、結果として、当初の予定よりもずっと長く台湾で研究生活を送ることになりました。
――実際に台湾で研究生活を送ってみて、どうでしたか?
楽しかったです。私は台湾社会や政治を研究していますが、私の在籍していた大学は台湾の司法界や官僚、政治家など、各界で活躍する人材を多く輩出していることで知られています。普通、一学生が「政治家に会って話を聞きたい」と希望しても、簡単に実現するものではありません。しかしここでは、比較的気軽にご紹介いただけることもありますし、同級生が、すでに官僚や政治家、実務家として活躍していることも少なくありません。また、教員が選挙に立候補したり、政府の要職に就任したりすることも珍しくありません。学生同士で政治や社会問題について日常的に話しますし、市民運動に参加することも非常に活発です。
――台湾研究の魅力は何だと思いますか?
台湾は、長い歴史の中で植民地支配や権威主義体制を経験しながらも、現在ではアジアを代表する民主主義社会へと発展しています。しかし同時に、中国との複雑な関係を抱え、「自分たちは何者なのか」というナショナル・アイデンティティの問題が、政治や社会の中で非常に重要なテーマになっています。台湾にいると「国」とは何だろう、「ナショナル・アイデンティティ」とは何だろうといつも考えさせられます。それは最初から自明のものとして存在するわけではありません。
また、台湾社会には日本と歴史的・文化的につながる部分も多くあります。日本統治時代の記憶、戦後の日台交流、災害時の相互支援など、日本と台湾の関係には、単なる外交では説明できない深いつながりがあります。一方で、日本では台湾について断片的にしか知られていないことも少なくありません。逆に台湾側にも、日本に対するイメージや誤解があります。だからこそ、研究を通じて両者の相互理解を深めたいと考えるようになりました。台湾について学ぶことは、日本を知ることでもあります。
――現在はどのような授業を担当されているのですか?
現在は武雄アジア大学で、地域研究(中国・台湾)、ジェンダー学、そしてPBL型授業などを担当しています。授業では、「自分で考えること」を重視しています。「自分が当たり前だと思っていることは、他の社会でも同じなのだろうか」、「日本社会との違いはどこにあるのか」などを、学生と一緒に考え、議論していきます。また、PBL型授業では、「多文化共生社会」をテーマに学生自身が佐賀県内の自治体のご協力を得ながら調査を行い、より良いアイデアや解決策を考えるプロセスを大切にしています。
――フィールドワークも重視されているそうですね。
はい。私は、現場に足を運ぶことが非常に重要だと考えています。本や論文から得られる知識はもちろん大切ですが、実際に現地へ行き、人々の声を聞くことでしか見えないものがあります。学生にも、できるだけ「現場から学ぶ姿勢」を持ってほしいと思っています。
――最後に、これからの目標を教えてください。
私はこれからも、自分の研究を通じて日本と台湾の相互理解に貢献していきたいと考えています。現在、東アジアは大きな変化の時代にあります。国際情勢は複雑化し、人々の価値観も多様化しています。そうした時代だからこそ、異なる社会や文化を深く理解しようとする姿勢がますます重要になると思います。
研究者としては、台湾社会の変化を丁寧に分析し、その背景にある歴史や人々の意識がどのように変化してきたのかを明らかにしていきたいと思っています。そして教育者としては、学生たちが国際社会を多面的に捉え、自分自身の言葉で世界や社会を語れる力を育てていきたいと考えています。
武雄の印象
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