【観光学・現場研修レポート】学生が学ぶ「鹿島の観光まちづくり」のしくみ(近藤教授)

本学の「観光学」の授業では、教室の中だけでなく、実際の観光地を巡るフィールドワーク(現場研修)を積極的に行っています。今回は、近藤教授と学生たちが佐賀県鹿島市「肥前浜宿」を訪れ、奇跡の復活を遂げた観光まちづくりの現場を体験しました。近藤教授からのレポートをお届けします。

「観光学」学生による現場研修会でわかった“鹿島の観光まちづくりのしくみ”

  • 2006年、肥前浜宿はなぜ国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれたのか?
  • 2012年、“鹿島酒蔵ツーリズム®”はなぜ生まれたのか?
  • 2014年、観光豪華特急「ななつ星」は肥前浜駅になぜ停車するようになったのか?
  • 2024年、天皇皇后両陛下はなぜ肥前浜駅にお立ち寄りになられたのか?

これらの「なぜ?」を紐解くため、「観光学」の授業の一環として、学生と共に鹿島市、JR長崎本線・肥前浜駅にある「NPO法人 肥前浜宿 水とまちなみの会」(会長 中村雄一郎氏)を訪ねました。

今から30年以上前、肥前浜駅は国鉄民営化に伴い無人駅となりました。それに隣接する江戸時代から続く肥前浜の宿場町や酒蔵のまちも、当時は荒廃の一途をたどり、非常に危うい状態にありました。

無人駅から始まった「奇跡の復活劇」

地域の危機を救うため、NPO法人が立ち上がります。宿場町・酒蔵のまちで蔵開きに合わせた「花と酒まつり」を開始し、同時にまちそのものを「肥前浜宿」として商標登録。景観の保全管理に努めました。

さらに、JR肥前浜駅内に観光協会とNPO事務所を設けることで、無人駅を「有人駅」へと戻し、駅に活気を取り戻したのです。 これと並行して、鹿島にある酒蔵6社のお酒を鉄道観光客がいつでも楽しめる「HAMA BAR」を駅構内に設置。列車が停車している間、1番線ホームからわずか5mの距離にあるこのバーで、旅行客が鹿島の銘酒を同時に味わえる画期的な仕組みを作り上げました。

観光列車の停車時には、地域住民が郷土芸能やソーラン踊りを披露し、名産の柑橘を振る舞うなど、まちぐるみでの文化交流が生まれました。建物の修復保全、さらには日本酒6蔵の海外輸出にまでこぎつけ、まさに「地域住民の力で地域資源が観光資源へと生まれ変わり、駅と酒蔵のまちに再び光が当たった」瞬間でした。

10万人を熱狂させる「鹿島酒蔵ツーリズム®」の誕生

こうした地道な活動が実を結び、国から「重要伝統的建造物群保存地区」に選定。さらに、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)において、富久千代酒造の「大吟醸 鍋島」が世界一である金賞(チャンピオン・サケ)を受賞する快挙を成し遂げます。

これを契機に、6社の酒蔵がこぞって日本初の「鹿島酒蔵ツーリズム®」を開始。今では毎年10万人もの人々を迎える佐賀県屈指のビッグイベントへと成長しました。 この成功を裏で支えているのは、農家、漁師、蔵元6社、宿場町の市民、NPO法人のガイドさん、そして行政です。その熱気に応えるように、JR九州の名物特急列車が次々と肥前浜駅に停車するようになりました。

天皇皇后両陛下のご訪問と、進化し続ける鹿島

最近では、6蔵のうちの1社である能古見酒造が「鹿島干潟酵母」を用いた酒造りを開始しました。ハゼの研究をされている天皇陛下がこの取り組みに関心を寄せられ、2024年の国民スポーツ大会(SAGA2024)の折、天皇皇后両陛下がわざわざJR肥前浜駅をご訪問されました。この出来事に、まちは大きな感動と喜びに包まれました。

肥前鹿島の観光まちづくりのネタは、今この瞬間も日々進化し続けています。学生たちにとっても、地域の方々の熱意と工夫が「まちを動かす力」になることを肌で感じる、非常に有意義な現場研修となりました。(文責:近藤政幸)

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